スムーズな介護に信頼関係は欠かせない。

「相手の尊厳を遵守した介護」と聞くと、非常に難しい対応を連想する人もいますが、高齢者にも一人の人間として敬意を示し、自然に接することだと考えましょう。
要介護状態の高齢者の多くは、頭の中では事情を理解していたとしても、家族に迷惑をかけた申し訳なさや、自身が邪魔者ではないかとの不安感から、非常に不安定な心理状態になっていることがあります。
そのため、意に沿わない介護をされたり、気分を害する言葉を耳にしたりすると、強い敵意や拒絶感を抱いてしまう傾向があるようです。
したがって、テキパキと介護を進める姿すら、ときには「邪見にされている」「渋々仕事をしている」などと誤解されることがあるので、介護士は高齢者の心理に気を配る必要があります。

しかしながら、腫れ物に触れるようなスタンスで高齢者に向き合うと、スムーズな介護に必要不可欠な相互信頼を構築することはできなくなってしまいます。
ですから、やさしく響く明瞭な言葉を相手に投げかけてあげるようにしましょう。
身体を起こす、おむつを交換するなど、なにか一つでも介護を行うっ場合には、まず「今から何をするのか」をその都度語りかけ、意向を確認することがポイントです。

そして、相手が何かを訴えている場合は、例え意味不明だったり、言葉自体が聞き取れなかったとしても、無視したり、適当に流してはいけません。
傾聴している姿勢をしっかり相手に示すリアクションが大切です。
「この人は自分に対していい加減な態度を取らない」「人としてきちんと向き合ってくれる」と相手が感じてくれるようになれば、介護業務もスムーズに行えるようになるので、利用者さんと信頼関係を築くことはとても大切なのです。